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こんにちは。アキです。
前回の記事では、自分の経験を踏まえた下請法の概要をご説明いたしました。
今回は企業で勤務しているとよくご相談いただく下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」)の具体的な事例を少しまとめておきたいと思います。特に発注ご担当者の方、経理業務に就いている方などのご参考になればうれしいです!
下請法の適用有無についての相談
グループ企業間への適用有無
下請法の問題を検討するためには、そもそも下請法が適用される取引なのか?という点をクリアにしておく必要があります。
親子・兄弟といったグループ企業間取引については、「運用上問題としていない」という公取委見解が公表されており、事実上は下請法は適用されないものとして実務上対応してもよさそうです。
国・地方公共団体・学校法人との取引の適用有無
私がいた会社では、国・地方公共団体・学校法人からの委託取引を受けることが多く、支払期日を3か月~半年先に設定されることがありました。
もしその取引に下請法が適用されると、「60日以内(実際は31日の月もあるので公正取引委員会・中小企業庁では2か月以内として運用してもらっているようです)」の支払い期日に見直しを促すことができるので、問題となるのは「学校法人との委託取引に下請法が適用されるか?」という点です。
結論としては「下請法は適用されない」という判断になります。公正取引委員会・中小企業庁にこの問題が出るたびに照会してきましたが、いずれもそのご見解をいただきました。
学校法人には資本金概念がなく、その性質上、企業をいじめることが想定されえないため、というのが理由だそうです。個人的には理屈は抜きにして、役所や大学などは契約交渉では手厳しいところも多いので、その結論には違和感を覚えますが、ともかく日本の法制度上はそれが現状とのこと。
ちなみに、話が脱線しますけど、地方公共団体の中には、あまりに困る要求を企業に押し付けるご担当の方もいますので、その場合、当該団体のコンプライアンス相談窓口に通報することで円満(!?)解決に至ることが多いです。ご参考までに。
外国との取引への適用有無
グローバル化・ボーダレス化した現在、アメリカ・中国・韓国やインド、ヨーロッパ、最近では中東やアフリカなど、日本の企業もグローバルに取引を行うことが当たり前になってきました。
そのような状況で、外国企業から長期の支払い期日や、度重なるサービスのやり直し、一方的な短歌設定など下請法に反する対応をされることもよくあります。
上記の役所・学校法人と同じく、外国法人との取引も「下請法は適用されない」のが現状です。
国によっては代理店を保護するルールもありますが、あくまで局所的。
基本的にはグローバル取引は「契約(書)」の条件で判断すると考えておくのがよいかと。
※個人情報保護、贈収賄規制などについては、EUと米国で厳格なので、その点は要注意です。
そうしますと契約書の知識・意識が今後ますます重要になってきます。
売買契約への適用有無
下請法は「委託取引」が対象なので、売買契約には適用されません。
実際には、売買契約でもとても対等とは言えない取引も散見されますが、下請法という武器は使えません。ただ、独占禁止法というルールもあるにはありますが、下請法と比べて弾力的な運用がなされることもあり、インスタントに使える武器としては使い勝手があまり・・・といった印象があります。
ちなみに、売買契約とはいっても市販品ではなく「特注品(その取引関係者向けの仕様など)」の売買については下請法が適用されるので、その点も頭に入れておくのが良いかと思います。
発注書面交付義務についての相談
発注段階で記載難しい項目
親事業者(発注する側/通常強い側)は下請事業者(発注を受ける側/通常弱い側)に発注をする際には発注内容、下請代金額・支払い期日・方法などを明記した発注書面を交付する義務があると前回の記事でご説明しました。
一方、発注時点で工数が未確定のため、単価のみ決まっているけれども下請代金額が記載できない、というご相談を頻繁に受けてきました。他の会社さんでも多いのではないでしょうか。
この場合、素直にその理由を明記することで、工数が確定次第速やかに追加書面(補充書面と呼ばれます)を下請事業者に追加交付することをもって適正とされています。
この運用は煩雑ということもあり、取引現場では漏れがあることが少なくありませんので、下請法を指導する企業内部(発注側)の方としては要注意の項目になります!
下請事業者の側としても、そのような運用がなされていないのであれば、発注側への是正申し入れをしてみてはいかがでしょうか?どうしてもらちが明かなければ、公正取引委員会・中小企業庁にご相談するのも一案です。
その他、そもそも発注書面を交付していないというケースも実は多くあります。
以前の記事で記載したように、フリーランス新法の施行に伴って、下請法への規制強化、特にこの発注書面についての規制が厳しくみられると思われますので、十分ご留意なさってほしいです!
緊急対応時の補充書面
発注書面を必ず交付する・・・
そうはいっても「保守作業のように対象機器が故障して緊急対応が必要な時」もあると思います。
そのような緊急対応の場合、対応が完了したら速やかに発注書面を交付することで下請法違反からは免れることになります。この運用も漏れが出やすいので要注意です。
電子システムでの発注
デジタル化・DX化が進んできている現在、紙での発注書交付ではなく、電子システムを介して発注書を交付することも認められています。
ただ、委託を受ける側がそのシステム運用に承諾したことを示す承諾書を事前に取得しておく必要があるという下請法上のルールがあります。これ、めちゃくちゃ漏れていると思います。
ご自身の企業で対応済みか・・・念のためご確認されてはいかがでしょうか・・・💦
支払い遅延禁止についての相談
請求書が来ないから支配処理しないまま2か月経過した
下請法が制定された最たる理由が「下請事業者の資金繰りを回してあげることに寄与するため」なので、「下請事業者から請求書が届かなかったとか、届くのが3か月後だったので支払いが遅延した」といった理由は全く通用しません。
親事業者としては請求書が来る来ないにかかわらず、とにかく下請事業者の下請作業完了日から2か月以内に支払うことがmustです。
親事業者の経理処理システムで下請事業者向けに確実に2か月以内の支払いがなされるよう対応する必要があるほか、下請事業者には請求書を送付してもらうようリマインドを粘り強く継続することが必要になってきます。
経理担当者の机の中に請求書が眠っていた
経理担当者の机の中に請求書が眠っていた・・・という笑い話も経験したことがあります💦
当然、下請法違反になります。
ちなみに、金融機関の休業日が支払日に該当する場合、
①原則としてその前の平日に支払うか、
②事前に親事業者・下請事業者間で休業日後に支払うことで合意したうえで支払うか、どちらかの対応が必要になります。
予め発注書面のフォーマットに組み込んでおくことも一案です。
その他カテゴリーについての相談
労務費上昇に伴う単価協議をしていないけど大丈夫?
最近は労務費が上昇している状況の中、下請代金を特に理由なく据え置いたままにしていると、下請法の「買いたたき」に該当して下請法違反になる可能性があります。
最終的には単価据え置きにするにしても、定期的に単価協議を行う必要があり、その記録を残しておくのが企業としては必要な対応です。
以下は公正取引委員会の調査をご参考として引用しておきます。
引用元:公正取引委員会
241216_tokubetsuchousakekka_gaiyou.pdf
メーカーにいたときに小売店の販売応援を強いられました。
私がメーカーにいた頃、販売先の小売店から休日に店頭での販売応援を強いられたことがあります。
接客の他、レジ対応まで行わざるを得なかったので「大丈夫これ?」と思っていましたが、今では下請法に明確に違反すると理解しています。
販売応援はあくまで友好的な関係の中でのお願いにとどめるほか、価格に関する範囲の業務は触れないように小売店としては留意する必要があります。
今回は下請法に関する個人的な経験の一部をご紹介しました。
今後、さらなる労務費上昇や企業構造の変化やフリーランス新法制定に伴い下請法の規制強化の流れが進むことが予想されますので、下請法コンプライアンスに十分意識をしていきましょう。
そうすると、大企業・中小企業庁とも笑顔で活動できる状況が訪れると思います。
引き続きよろしくお願いいたします。